島守(2年)です。今回は、英語圏文化論を専門にするグレゴリー・ハドリー先生にお話を伺いました。教育に対する熱い思いを抱いているハドリー先生。「何事も経験することが大切で、人生において無駄なことはない」という先生の一言が印象的でした。先生は様々なことを経験されており、とても有意義なインタビューとなりました。
- 日時:2014年10月23日(水)8:30〜9:30
- 場所:総合教育研究棟 A503
- インタビュアー:佐藤 (2年)、太田(3年)
- インタビュイー:Gregory Hadley 先生(西洋言語文化学プログラム)
記事の目次
ハドリー先生の研究内容について~なぜ英語を勉強しなければならないのか
学生:本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。よろしくお願いします。まず始めに先生のご専門の研究内容について教えてください。
ハドリー:私の専門は英語教育の社会学というもので、英語の授業の目に見えない構造を考え、歴史的・政治的・経済的背景が英語教育にどのような影響を及ぼしているのかを研究しています。なぜ英語を勉強しなければならないのかが最大の研究テーマで、英語を学ぶ理由を日々追究しています。
学生:では、先生が英語教育の社会学を専門とするきっかけがなにかあったのですか?
ハドリー:私は大学時代、副専攻としてスペイン語を学んでいました。その後、キューバ難民のカウンセラーとなり、アメリカでスペイン語を話すようになりました。そこには英会話クラスも設置されていて、私が代理で英会話を教えるという機会もありました。
その経験がとても楽しく、英語をもっとしっかり教えたいと強く感じ、私が英語教育の社会学を専門とするきっかけに繋がりました。
学生:ありがとうございます。アメリカにいながらスペイン語を用いての仕事など、多様な経歴をお持ちなんですね。先生のご経歴と言えば、新潟大学に赴任される前は新潟国際情報大学で教鞭をとっていらしたとのことですが、今回新潟大学への赴任を決めたきっかけなどはあるのでしょうか?
ハドリー:新潟大学は素晴らしい大学で、この大学に来れるチャンスがあったものですから。優秀なコミュニティに参加できてとても嬉しいです。

講義内容について~アイデンティティーが形成される要因を知る
学生:次に、先生が受け持っている授業ではどのような内容を扱っていますか?」
ハドリー:私は「英米文化論A」と「西洋文化概説」という授業を開講しています。「英米文化論A」では、イギリス人やアメリカ人の国家によるアイデンティティーを取り上げ、アイデンティティーが形成されるには様々な要因があり、一枚岩ではいかないことを学びます。また、国家主義や多民族主義へと至った経緯を社会的力学の面から考察します。
一方「西洋文化概説」では、メソポタミア、ヘブライ、エジプト、ローマ、ヨーロッパへと変遷した西洋文明の背景を辿り、なぜヨーロッパで現在のような英会話クラスの構造が形成されたのかについて学びます。授業はTOEIC500点レベル程度の英語による授業で、学生の質問を通してより理解を深めていきます。
学生:ハドリー先生の授業は英語で行われるということですが、学生の反応はいかがですか?
ハドリー:満足していますよ。大多数の学生には好奇心があります。人文学部の学生になまけものはいないと思いますね。単位取得のためだけに授業をすると言うのはそのクラス内の社会がダメになってしまいます。それは先生にとっても生徒にとっても良くないことだと思います。
学生:新潟大学の学生に満足していると言っていただけて、なんだかこちらとしては照れてしまいます。
ハドリー:学生たちは授業でただ理解するだけでなく更に踏み込んだ質問をし、丁寧に授業に応えてくれています。

特に手前の本はカラーイラスト付きでイギリスの社会や文化など、様々なトピックについて紹介している。
学生時代について~人生において無駄なことはない
学生:先生はどのような学生生活を過ごされていたのですか?
ハドリー:私は苦学生で、ローンが残っていたため、ラジオ局でニュースアナウンサーのアルバイトをしていました。しかし、このアルバイトの経験が勉強に活かされ、アメリカでコミュニケーション論の学位を取ることができました。
本当に苦労をして学位を取得しましたが、結果食べられなくても勉学のありがたみを知ることができました。人生において無駄なことはないですね。苦学生だったことも良い経験です。
そしてアメリカの大学を卒業後、さらに勉学に励むためイギリスに旅立ちました。イギリスの大学では、アメリカの大学との違いなども認識しましたね。
学生:アメリカとイギリスではどのような点で異なっていたのですか?
ハドリー:一般的に、アメリカの教育プログラムには柔軟性がないのに対し、イギリスでは通信教育が行われているなど多様性、柔軟性がありました。また、イギリスはコミュニケーションにおいて、ある程度日本と似ている部分があり、直接的な言葉を用いずに本音と建前で接することが好まれました。
学生:そうなんですか!イギリスと日本のコミュニケーションが似ていたことに驚きました。
ハドリー:英語でも日本語のような話し方が歓迎されますよ。
学生:日本語という話も出てきましたが、先生が初めて日本にいらしたのはいつごろですか?
ハドリー:1986年に旅行で初めて日本を訪れ、日本語を勉強したいと思うようになりました。
学生:日本に来る前に日本語を勉強する機会はなかったということでしょうか?
ハドリー:当時アメリカにもいわゆる日本語スクールはありましたが、これはエリートビジネスマンが主な顧客対象で、授業料は一時間で300ドルもしました。とてもじゃないけど気軽に出せる金額ではないですね。
学生:一時間で300ドル!日本円で約35,000円…。それは高額ですね。
ハドリー:ですから日本に来て、日本語の勉強を始めました。
学生:そうなんですね。先ほど、アメリカで学位を取得したのち、イギリスに渡ったとのお話をしていただきましたが、イギリスでの学生生活で思い出に残っていることはありますか?
ハドリー:そうですね、特に思い出に残っているのはイギリスで出会った人々のことでしょうか。私にとって、周りにいる人が良ければ一番のホームになりえます。政治なんかよりも人間関係の方が重要ですね。
学生:人間関係に恵まれるというのは大切で幸せなことですね。
高校生へメッセージ~楽しい授業で一緒に勉強しましょう!
学生:最後に、高校生の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
ハドリー:ぜひ新潟大学に来てください。私の授業では教科書を使用せずに、英米文化の未来や文明、更には多文化社会へと導いた信念など様々なことを学んでいきます。英語でアメリカ、イギリスについて知りたいのなら、楽しい授業で一緒に勉強しましょう!
●Gregory Hadley(ハドリー・グレゴリー)先生
・専門:英語圏文化論(社会言語学)
・所属:人文学部 西洋言語文化学プログラム、大学院 現代社会文化研究科
・アメリカ出身。イギリスの大学で博士号を取得。趣味は旅行とガーデニングで、新潟でのお気に入りの旅行先は佐渡や粟島、シーサイドラインのドライブ。