「プルーストを原文で読む授業を履修したのが現在の研究をする直接のきっかけ」~津森圭一先生にインタビュー!

西洋言語文化学3年の渡辺です。「新任教員インタビュー」として、フランス近代文学を専門にする津森圭一先生にお話を伺いました。

それぞれの質問に大変丁寧に答えていただきました。津森先生がプルーストの作品に触れたように、私たちも学生生活の中で人生の方向を大きく決める出会いがあるかもしれません。

  • 日時:2016 年 5 月 16 日(月) 10:15~10:45
  • 場所:総合教育研究棟A 棟 6 階 津森研究室
  • インタビュアー:中村(西洋言語文化学 3 年)、高井(メディア・表現文化学 2 年)
  • インタビュイー:津森圭一先生(メディア・表現文化学プログラム准教授)

津森先生ご自身について

学生:本日はよろしくお願いします。まず、先生はどのような研究をされているのですか?

津森先生(以下津森):はい、研究対象はフランス近代文学です。新潟大学では現代文化論が専門になっていますが、具体的にはマルセル・プルースト……、西洋文化の主専攻で聞いたことありますか?

学生:あ! 聞いたことあるかもしれないです!

津森:20 世紀初頭の小説家なんですが、代表作に『失われた時を求めて』という長編小説があります。その中で当時の社会や芸術をどのように反映しているのかということに関心を持っています。

特に「風景」という視点に着目していて……「風景」って、みなさん何気なく使っている言葉だと思うんですけど、本当はどういうことなのかについても考えてみました。

プルーストで言うならば、「無意識的記憶」というキーワードがあります。今感じた感覚がきっかけになって過去の記憶がよみがえるという経験、みなさんありますよね。

プルーストはこの現象を主題にして小説を書いているんです。この現象によってよみがえった情景が作中の「風景」となるわけですが、つまり彼はむしろ目に見えないものを「風景」と呼んでいるのではないか、と考えています。最近は、絵画、詩、小説、庭園などを風景を表現する媒体というふうに考えて、もう少し広く研究していこうと思っています。

学生:では次の質問ですが、先生のご経歴について伺いたいと思います。

津森:山口県で高校時代まで過ごし、京都で大学生活を送りました。そこでたまたま初修外国語でフランス語をとったとき、世界が広がっていく感じがしたんです。これが今の研究につながっています。

今までなじみのなかったフランス文学作品を読む授業に出て、初めて西洋文学に関心を持ちました。特に、プルーストを原文で読む授業を履修したのが現在の研究をする直接のきっかけです。

学生:その授業でプルーストの原文を読んでなかったら、現在の研究はしてなかったかもしれないんですね。

津森:そうですね。その授業をとってなかったら、その先生がいなかったら、いまは違う仕事をしていたでしょう。

博士課程の途中からはスイスのフランス語圏にあるローザンヌ大学に留学し、その 1 年後にパリへ移って、パリ第三大学の博士課程に入学し、博士論文執筆のための研究を行いました。

その後、帰国してしばらくは京都で過ごし、新潟に来る直前の 2 年半は東京のいくつかの大学で、学生の留学支援の仕事やフランス語・フランス文化の授業をしたり、学生をヨーロッパに連れていく引率の仕事をしたりしていました。

新潟大学で担当している授業について

学生:新潟大学ではどのような講義をされているのですか?

津森:メディア・表現文化学では、3・4 年生を対象に「文学における旅」というテーマで演習をしています。現在は、ヨーロッパの古代より人々はどのような旅をしてどのように記録してきたかを紹介しているのですが、今後は学生に旅を扱った文学作品を自身で選んでもらって、そこで記述されている旅の意義や役割について報告してもらう予定です。

あともうひとつ、現代文化論 B では、私の研究テーマにもつながるのですが、古今東西の庭園文化についても講義をしています。土地をデザインして、そこに「風景」を生み出そうとする試みはどの文化にも存在しますが、それらは多種多様です。この講義では、それらを紹介しています。講義形式で人数が多い授業なので、学生には毎回質問や感想を書いてもらって、次の授業でコメントする形式をとっています。

あとは他学部でフランス語の授業、大学院では西洋の風景画の歴史について授業をしたりしています。

津森先生の学生時代について

学生:では次に、先生がどのような学生生活を送っていたのか伺いたいと思います。

津森:私は陸上競技部に入っていたので、それが中心になるような生活をしていました。

800 メートルっていう種目をご存知ですかね。中途半端な距離ですが、400 メートルトラックを 2 周、男子は 2 分弱で勝負が決まります。ペース配分やほかの選手との駆け引きや位置取りなど、いろんな要素が関わってくるのがおもしろくて、没入していました。ほかの時間は読書に熱中していました。

学生:学生時代に読んだ本で、特に印象に残っている本はありますか?

津森:そうですね、やはり今の研究対象になったプルーストの『失われた時を求めて』と……、あとは同じく長編小説の『チボー家の人々』という本が面白かったですね。ほかにもたくさん本は読みました。今思い浮かぶのはこれらです。

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