「いろいろな分野を関連付けて勉強してほしい」~中嶋豊先生にインタビュー!

メディア・表現文化学 2 年の本多、1年の熊谷です。「新任教員インタビュー」として、実験心理学を専門にする中嶋豊先生にお話を伺いました。 

  • 日時:2019 年 11 月 22 日(金)14:30~15:10
  • 場所:総合教育研究棟 F488
  • インタビュアー:本多(メディア・表現文化学 2 年)、熊谷弘毅(1 年)
  • インタビュイー:中嶋豊先生(新潟大学人文学部准教授)

中嶋先生の研究内容について

学生:「それでは、まず初めに先生の研究内容についてお聞かせください。」

中嶋先生:「専門の分野は実験心理学になります。基本的に人間の脳の感覚・知覚・認知、その中でも視覚のメカニズムの研究をメインに行っています。また、目の錯覚、いわゆる錯視についての研究も行っています。そのような人間の基本的メカニズムを知ったうえでなにか社会の中で役に立つ技術は無いだろうかと研究をしています。

人間の特性をより詳しく知ることでモノが使いやすくなるのではないでしょうか? 例えば、現在、自動運転技術は世の中に普及しようとしていますよね。現段階の技術では、自動といえども完全に全自動な訳ではなく、緊急時などには人が運転を代わらなければならないのです。タクシーの運転手さんに突然運転を代わってほしいと頼まれても難しい話ですよね。そのような場合にヒトはどのように乗っていたら良いのか、ということについて心理学の知見や実験を用いて研究をしています。

つまり、実験心理学を用いて人間のメカニズムを知ること、その知見を用いてモノを使いやすくすることの二本柱で研究をしています。」

先生のこれまでのご来歴

学生:「それでは次に、先生のご来歴についてお願いします。」

中嶋先生:「東北大学の文学部に入学したときには考古学か心理学を専攻したいと思っていたのですが、私は心理学を専攻しました。東北大学を卒業した後は、そのまま心理学を仕事にしたいと感じ、東京大学大学院の心理学研究室に進学しました。

その後はそのまま東京大学の中にあった研究所で研究員をしていました。その研究所はバーチャルリアリティーの大規模な施設があったりして、どちらかといえば工学系の研究所でしたね。また、理工系の電気通信大学で 5 年ほど特任助教や研究員として勤めました。

どうして心理学が専門なのに工学系の道に進んだのかと疑問に思いますよね。実は当時の上司にあたる先生は、人間の脳のメカニズムを数式で表したりする手法を用いていました。私はその先生のもとで人間の視覚のメカニズムについて実験を通して研究していました。

電気通信大学の中でも一回別の研究室に移り、その際にドライビングシミュレータを用いた応用的な研究を始めました。電気通信大学ののち、同じ東京にある成蹊大学にて理工学部の助教として勤務していました。

そして今年の 9 月から新潟大学の人文学部に着任しました。長い間理工系の大学にいたので、約 10 年ぶりに文系の学部に戻ってきたという印象です。」

学生:「それでは、文系と理系の学問を応用した研究をされていたのですね」

中嶋先生:「そうですね…工学的な意識を持ちながら心理学の研究をしていたといったほうが近いと思います。応用的なことを目指しつつ、基礎研究をしてきました。文系出身なので理系の知識を学ぶのは多少苦労しましたが、少しずつ地道に学んで習得しました。」

担当されている授業とその内容

学生:「次に、先生が担当されている授業とその内容についてお聞かせください。」

中嶋先生:「先ほども話したように私は 9 月に着任したので実は講義はまだ担当しておりません。ですが、心理学分野の 2 年生の実験を一つ担当したり、基礎演習で学生の発表を聞いてコメントしたりしています。また、3・4 年生の発展演習で応用的な話をしたりもしています。

身の回りの問題を考えてきてもらって、それに対してどのような心理学的アプローチをすればよいのかについて学生と一緒に考えています。

モノが見えている、というのは当たり前の出来事のように考えられていますが、実はしっかり研究してみるとそのメカニズムにはまだまだ分からないことがたくさんあります。常識だと思っていた事実に対して本当にそれでよいのかと問いかける姿勢を大事にしてほしいと、授業の中でよく話しますね。」

先生の学生時代について

学生:「それでは、先生の大学生時代についてお願いします。」

中嶋先生:「私が希望していた心理学分野は、当時、非常に人気のある分野であったため、2 年生進級時の研究室振り分けに備えて、1 年生の後半は必死に勉学に励んでいました。大学院の先輩と親交を深め、研究室の雰囲気を肌で感じたり一緒にご飯に行ったりしていました。また、地歴科の教員免許を取ろうと思って歴史の授業を取りながら免許取得を目指していました。」

担当の分野を目指す人へのメッセージ

学生:「それでは、最後にご担当の分野を目指す人へのメッセージをお願いします。」

中嶋先生:「食わず嫌いをしないで、どんなことにも挑戦してほしいです。先ほども述べたように、私は文系の大学を卒業した後に理系の研究室に勤めていました。あれは理系だから、あれは自分の分野とは違うから勉強しなくてよい、などと理由付けをせずに、いろいろな分野を関連付けて勉強していくと広い視野を手に入れることができます。何も強制的にやる必要は無くて、興味を持った時に接しておく程度でも十分役に立つと思います。」

中嶋豊(なかじま・ゆたか)先生

心理・人間学プログラム。

東北大学で心理学を学んだ後、東京大学大学院などで視覚メカニズムなどの研究に従事。

2019 年 9 月に新潟大学人文学部に准教授として着任。

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