美術館探訪──新潟市美術館『リアル(写実)のゆくえ』──

四年の熊谷と二年の折田です。12月18日に新潟市美術館(新潟市中央区)へ行き、企画展『リアル(写実)のゆくえ』を観覧してきました。美術と人文学には深い関連があると言われています。「美とは人間にとってどんな意味があるのか」「なぜ美=良いことという認識があるのか」など、これら問いを突き詰めることも人文学部で出来ることのひとつです。今回は新潟に数ある美術館の中から新潟市美術館を紹介します。ブログ閲覧者のみなさんもぜひ一度足を運んでみてください。

企画展『リアル(写実)のゆくえ』

この展覧会では、明治以降の日本における絵画・彫刻・工芸における写実表現が主題となっています。現存するものをうつしとって美術作品に反映させるとき、作家はどのような工夫を凝らしリアリティを生み出すのでしょうか? その技法の中に作家自身の思想・信条までもうかがうことが出来ます。

「写実」とは?

企画展のテーマとなっている「写実」、これは多くの人にとって日常的に聞きなれない言葉ではないでしょうか。写実を一言で表すと「事物の実際のままをうつすこと。ありのままを絵に描いたり、文章に書きあらわしたりすること」になります。

この写実という用語は文学上、美術史上の文脈で多く使用されることがあり、実際に19世紀のフランスでは「写実主義」という様式が流行していました。「事物を実際のままに写すこと」が流行した背景には何があるのでしょうか?

一つの説として、ロマン主義からの反動が挙げられます。当時の美術界では神話や宗教をその題材として扱うことが多く、事物を誇張したり、抽象化したりして描くことがありました。そのような風潮へのアンチテーゼとして生まれたのが写実主義だと言われています。

館内ショップ・喫茶店について

館内には喫茶店が併設されており、私たちもここで一休みしました。また隣にはショップがあり、地元のクリエイターが作った様々な作品が販売されていました。

ベーグルや珈琲は地元の食材が使用されていました。新潟という地域と共に美術を活性化させようという姿勢が随所から感じられます。

常設展示室について

常設展示室ではコレクション展という展覧会が開かれているようです。新潟にゆかりのある作家からの寄贈品が多く展示されていました。

こちらの作品は1964年の新潟地震を題材に描かれたものだそうです。

アクセス

〒951-8556 新潟市中央区西大畑町5191-9

新潟駅万代口バスターミナルからC6八千代橋線が便利です。

感想

(折田)鑑賞当日、来場者は数人だったので、作品をゆっくりと楽しむことが出来ました。館内は薄暗く、落ち着いた雰囲気でした。明治時代の作品から現代の作品まで、年代順に配置されていたと思います。

入り口付近に展示されている油絵の中に、西洋画を代表する高橋由一の作品があります。鑑賞できるとは知らなかったので、驚きました…。これは嬉しい…!

特にお気に入りの作品は、本田健さんの「夏草」シリーズです。正方形のキャンバス一面は緑で埋め尽くされています。絵具の隆起やツヤは、植物に新鮮さや動きを与えているように見えます。美しい…!!!この作品のポストカードは館内のミュージアムショップで買えるそうです。

また、佐藤洋二さんの作品も印象に残っています。シリコーンで作られた人間の手首や指を見ることができます。あまりにもリアルで、気持ち悪さも感じました。本物に見えるからこそ、手首や足が展示されているという不気味さ、違和感を感じるのだと思います。

本当に楽しかったです。ぜひ、皆さんも鑑賞してみてほしいです!

(熊谷)記事を作成しながら思ったのは、この美術館が地域と共に歩もうとする姿勢が強いということです。美術作品を鑑賞しに来るのがメインでも良いとは思いますが、新潟という地域を知るために、あえて美術館に行くという発想の転換をしても面白いと思いました。新潟市美術館とは単なる地名表記を表しているのではなく、さまざまな意味で新潟市の美術館なのです。

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