1年の太田、中嶋、社会学専攻2年の畠山です。今回の「ゼミ訪問」では、社会文化学プログラムのうち、芸能論を専門とする中本真人先生のゼミを紹介します。
中本先生のインタビュー記事はこちらです。ぜひ併せてご覧ください!
中本ゼミの概要
現在,中本先生のゼミは4年生1人、3年生3人、2年生2人の少人数で行われています。そのうち芸能論を専攻しているのは4年生と1人の2年生のみです。3年生(3人とも民俗学専攻)はサブゼミとしてこのゼミを受講しています。人文学部の2年生は通常、ゼミに参加することができませんが、少人数であることを鑑みて、中本ゼミではゼミと実習を同時に行っています。2年生は早くから、4年生の卒論内容に触れることができるということです。非常に良い環境で学ぶことができます。

『梅枝』と『富士太鼓』
今回、私たちが取材をした際のゼミのトピックは、ゼミ受講者である2年生の夏の課題の発表でした。東京の国立能楽堂で能を見てきた学生の報告書を、中本先生が講評し、知識を補うという形で行われていました。
日本の芸能史では能や狂言がよく取り上げられます。しかし一般的には、とっつきにくいイメージがあるのではないでしょうか。この日は能の大まかな流れについて紹介していただきました。
能にはシテ(主人公)とワキ(脇役)がいます。
① ワキ(旅人が多い)が出かける。
② シテがわけありげに登場して、どこかへ消えていく。
③ 間狂言で能の物語が語られる。
④ 本性を現したシテが再登場する。 これが大まかな能の流れです。
発表者の学生が題材にした能作品は『梅枝(うめがえ)』でした。この報告で中本先生は、富士と浅間が太鼓の演奏者を争って富士が殺されるという『富士太鼓』の話をあげて、梅枝がこの話の後日談であることを補足していました。富士の妻が梅枝のシテ(主人公)となります。当時、芸能分野に携わっていた人々は政治的なものに巻き込まれることが多かったそうで、その一例といえます。楽人が命がけで跡目を争い合うことも珍しくはなかったため、能の話の背景として楽人の競い合いが扱われることは珍しくありません。
能は元来外で行われるものでしたから、現代の能の扱いは様変わりしたと言えます。報告書によると国立能楽堂で行われた梅枝は蝋燭(ろうそく)能で、その前に見た狂言と比べると理解の難しいものだったそうです。席によって舞台の見え方が大きく異なることにも触れていました。発表者の学生がとった席は柱で舞台が見えにくい位置にあったと言います。若い人が少なかったという内容も挙がりました。これもゼミ内では「若い人たちが能へ関心を持つには」という一つのテーマとして扱われていました。能の観客は、能を習っている人が多いそうです。室町に誕生した能ですが、次第に現代人がバンドに憧れて実際に楽器を弾きたがるのと同じで、能を習う人たちが出てきました。次第に、大名や将軍の教養になったといいます。つまり、素人が理解しやすいようにはできていないのだといいます。
受講者にきいてみました
➤ 中本ゼミを選択した理由を教えてください。
- 主ゼミである民俗学ゼミに研究内容が近いことに加え、芸能に興味があるから。
- 1年生で履修した先生の授業が面白かったため。
- 自分の専攻分野に近いと思ったため。
- 日本の古典芸能から見える人間模様に興味があったから。
➤ 芸能論に関して、現在興味を持っている物事を教えてください。
- 民俗芸能
- 歌舞伎
- 民俗芸能における人々の集まりやその起源など
- 舞台化した神事
➤ あなたが思う、中本ゼミの特徴を教えてください。
- 少人数のため意見が出しやすく、先生からのフィードバックももらいやすい。
- 必要最低限の交流で負担がゼロ。
- ゼミへ行きやすい雰囲気。発言しやすい。
- 静かで落ち着きがあり、アカデミック的な規律を感じる。
- 厳粛
➤ これまでのゼミ活動で一番楽しかった出来事、内容を教えてください。
- 2年生の時にゼミ旅行で歌舞伎座に先輩たちと行ったこと。
- 佐渡の調査実習
- 佐渡実習。本来の目的は果たせなかったが、初めての野外実習は思い出に残っています。
➤ 中本ゼミでの今後の学びや、卒論に向けて展望などがございましたら教えてください。
- 民俗芸能で卒論を書きたいと考えているのでさらに民俗芸能についての学びを深めていきたい。
- 現在歌舞伎評判記集成に見られる市山助五郎という題で卒論を書いています。時代的な背景や出来事を知ることができるためそれを卒論などに生かしたいです。
- ひとまず理解を深めます。
担当の中本真人先生より
「芸能というと、例えば能や歌舞伎などのいわゆる伝統芸能・古典芸能というものが想像されますが、扱われる分野自体はもっと広く、私は、日本文化に関わることならば「芸能」の範疇に含まれると考えます。あまり狭く考えず、広く捉えてなんでもありだというところが芸能論のいいところでもあり、逆に言うとわかりにくいところかなという気もします。広く日本の文化について関心があるという学生さんは、芸能論に入ってからゆっくり選んでもらえればいいかなと思います。」

さいごに
ゼミへの参加条件は特になく、門戸は広いです。かつては文学や歴史を中心に卒業論文を執筆した学生もいたと聞きました。特定の分野に限定していない開放的なゼミだと言えます。日本の文化的なものを扱いたいけれども、ターゲットを決めかねている学生は是非この分野を専攻することをおすすめします!