Bonjour! こんにちは、社会文化学プログラム(文化人類学)4年の久須美諒典です。いよいよ私の連載は最終回。年の瀬に、いろんなことを振り返りながら思いを込めて綴りました。どうぞ最後までご覧ください!

帰国後の私~「新潟大学SIPS」学生リーダーとして
フランスから帰国し、春の息吹に心躍らせながら、日本での新学期に向けて準備を進めていた3月下旬。留学前からお世話になっていた国際交流推進課から1通のメールが届きました。
「本学の留学機運を盛り上げる活動チームを、職員と留学経験学生で立ち上げたいのですが、久須美さん、学生リーダーになってもらえませんか?」

自分の留学経験が、新潟大学の未来に役立つかもしれない! 今まで多方面からいただいたたくさんのご支援にも恩返しがしたい! 卒業までにどんなことができるだろう…?胸の高鳴りを感じ、「ぜひやらせてください!」とお返事しました。その後、呼びかけに応じて集まってくれた4名の学生メンバーたちとともに、2025年度「新潟大学SIPS」が始動!
何度かミーティングを重ね、10月21日(火)の昼休みには初めてとなるイベント「ゆるっと留学カフェ」を開催することができました。これは、過去に短期・長期を問わずさまざまな留学を経験した学生と、留学に興味をもつ学生が、気軽におしゃべりして繋がれることを目的にしたイベントです。ポスターや写真の展示も行い、お菓子やドリンクを用意して、いろいろな人に立ち寄ってもらえるように工夫しました。
開催にあたって、たくさんの留学経験学生が、オリジナルのポスターや掲示用の素敵な写真を提供してくれたり、当日のおしゃべりに参加してくれたりしました。こうして多くのあたたかい協力に支えられて、当日は私たちの想定を上回る80名程度の参加者たちが、図書館1階のラウンジに大集合!各テーブルやパネル前で楽しそうに談笑する様子が見られ、イベントは大いに盛り上がりました。

留学に関心を寄せる新大生が多くいることが可視化され、大成功を収めることができた「ゆるっと留学カフェ」。海外への夢をカタチにするきっかけを作る場として、これからも進化しながら続いていくといいな、と思っています。こちら(新潟大学HP)も併せてご覧ください。

フランス留学での出会いとご縁
ナントには、日本にルーツを持ちながらフランスで生活する子どもたちに、継承語としての日本語と日本文化を伝えるために活動する「あずき会」という団体があります。私も2回ほどボランティアとしてその活動に参加し、帰国直前の1月には書き初めの指導も行ってきました。
その「あずき会」で子どもたちを教え、フランスで「食」の大切さと出逢いの素晴らしさを伝えるYouTube活動をされている方とご縁がつながり、今年8月にはフランス人の旦那さんと2人のお子さんたちとの一時帰国の際に、ご家族そろって私の実家・久須美酒造へいらっしゃいました。メジロの巣や庭に棲むカエルなど、日本の自然と楽しそうに触れ合いながら、お酒にまつわる様々な話や酒蔵のストーリーにも一生懸命耳を傾けてくださいました。

また4月には、フランス人の友人が旦那さんと一緒に、日本への旅行の際に酒蔵を訪れてくれました。以前新潟大学へ留学していたことがあり、フランスでも日本語の授業やプライベートで何度か会っていた友人です。庭の門をくぐるなり “Parfait !”(素晴らしい!) と感動してくれたり、日本酒とフランス料理のマリアージュに大満足してくれたり。「通訳者」がいなくても、お互いに日本語とフランス語を使って言葉を理解し合い、友人夫妻・私・父と4人みんなで心を通わせ、楽しい時間を過ごせたのがとても良い思い出です。帰りの新幹線で、笑みを浮かべる友人の瞳に涙が光っていたのも印象的でした。
留学をきっかけに、日本とフランスの両国でたくさんの出会いが生まれ、ご縁が広がっていきました。こうした一つひとつのつながりを大切にしながら、いつか自分自身が日仏文化交流の懸け橋になること。これが、今の私が抱く夢です。
私を変えてくれた海外生活
私は幼いころからずっと、環境の変化に強い苦手意識を持っていました。幼稚園は1年半もの間、小学校も数か月間、登園や登校が本当に嫌で、家からなかなか離れられず、毎日毎日泣いてばかり。欠席や早退も日常茶飯事で、家族や先生方にはたくさん迷惑をかけてきました。中学1年の頃はストレスで体調を崩し、高校生活も1年目はなかなか馴染むことができず…。心の中には常に、「自分は新しい環境に慣れるのが人一倍遅い」というコンプレックスのようなものがありました。
そんな私が、大学3年生の1学期間、フランスに留学して海外生活を送ることになるなんて、もちろん夢にも思っていませんでした。今振り返ってみても、なんだか不思議な気持ちです。毎日が新しい発見と感動の連続!人と人があたたかく結びついたフランス社会に、これまで感じたことのなかったような居心地の良さを覚え(詳しくは前回の記事をご覧ください)、心から「楽しい!!」と思える日々を過ごす中で、いつの間にか留学前の不安は消え去り、海外での生活を満喫している自分がいました。
「新しい環境は苦手だと思い込んでいたけれど、実は外の世界に出ることが大好きだったんだ!」と、この留学を通してはじめて気づくことができた私。帰国後は、今まで行ったことのなかった場所にも積極的に出かけることが多くなったように思います。私を変えてくれた海外生活の経験は、一生の宝物です!

結びに
ここまで全5回にわたり、私のフランス留学について投稿してきました。読んでくださったみなさん、ありがとうございました!
留学に興味のあるみなさんに伝えたいこと。それは、留学は「語学力の向上」がすべてではないということです。あなたの興味関心や目的意識に基づいて、そして新たな出会いと縁によって、あなたらしい留学体験をデザインしていくことができるのです。
私自身は、フランス語の運用能力を高めることの他に、フランスの文化(特にワインをはじめとする食文化や、絵画・音楽等の芸術、教会建築など)に現地で実際に触れて体験することや、フランスで日本酒や書道といった日本の文化を発信することにも強い関心があり、それらが主要な留学目的でもありました。そして留学中は、さまざまな人たちからいただいた温かいサポートのおかげで、渡仏前には想像もしなかったようなたくさんの素晴らしい経験ができました。

またこうして目標を一つひとつ達成していく中で、新たな学びも発見しました。それは、「異文化社会で日常生活を営みながら、そこでの他者とのかかわりの中で自己の固定概念を壊し、この世界の新しい見方やものの考え方を得る」ということ。これはまさに、私の専攻である文化人類学の意義を、身をもって学んだことにほかならないと確信しています。このように、語学力が成長していくとともに、異文化での生活を通して新しく見えてくる世界があり、これこそが留学の醍醐味だと思うのです。
新潟大学は、奨学金制度や単位互換制度などの支援が充実しており、あなたの留学を後押ししてくれる環境が整っています。どんな留学を形作るかは「あなた次第」。可能性は無限大です!目の前のことに一生懸命向き合い、自分の気持ちに素直になって、今「やりたい!」と思えることに全力で取り組めば、きっと道は開けると信じています。これから世界に羽ばたいていくみなさんが、自分らしく素敵な体験を得られることを心から願っています。
最後に、4か月半もの間フランスで滞りなく快適に、実り多い留学生活を送ることができたのは、ひとえに懇切丁寧できめ細かくサポートしてくださった「なんとなくナント」をはじめ、さまざまな面でご支援いただいた新潟・ナント両大学の先生方や職員の方々、あたたかく接してくれた現地の友人・知人のみなさん、一緒に留学を駆け抜けた仲間たち、そしていつも私の心の支えとなり、日本で待っていてくれた友人と家族、私に関わってくださったすべてのみなさんのおかげです。本当にありがとうございました!
今回で、私の連載は終了です。まだまだ始まったばかりの「ナント日記」。これから少しずつ、さまざまな人々の手によって書き加えられ、豊かになっていくことでしょう。この日記が誰かにとって、チャレンジへの第一歩を踏み出す勇気と力になりますように…。
24/25年の留学渡航者からのリポートはこれにて終了です.25/26年もドイツ・フランスをはじめ,国外に出て様々な学びや体験を得ている学生がいます(既にボーフム便りはシーズン3に突入しています).留学・地域活動・インターンなどを通して,既定のカリキュラムに加えて学内外にフィールドを広げることで,学際的な視点や汎用的技能がデザインされると改めて感じました.今後も留学に限らず多様な人文学部のアスペクトをご紹介できればと思います.
[コーディネーター:島守 快聡]