「自分の体を通して考えて感じる」~青木要祐先生にインタビュー!


メディア表現文化学 4 年の本多です。「新任教員インタビュー」として、考古学を専門にする青木要祐先生にお話を伺いました。  

高校の日本史ではあまり旧石器時代について触れられなかった印象が個人的にはあったので、先生のご研究内容や学生時代の体験などのお話しを聞いて初めて知ることが多くあり、終始楽しくお話しを聞かせていただきました。

遺跡に行って発掘調査をしたり、そこで出土した物品を実際に触ったりと、考古学分野は人文学部のなかでもアクティブな印象を持っていましたが、実際に石器を作ったり、それを使ったりして当時の人々の生活を調べるという方法があることには驚きました。先生のおっしゃる通り、そのような実験を通じて自分の体で感じたからこそ発見できることも多いのだろうなと考えました。

  • とき・ところ  8 月 20 日(金)17 時~ オンライン上で実施
  • インタビュアー  本多(メディア表現文化学 4 年)
  • インタビュイー  青木要祐先生(新潟大学人文学部人文学科助教)
(▲写真:青木先生)

———まずは先生の研究内容から教えてください。

わかりました。私の専門が考古学なのですが、その中でも比較的古いほうの、旧石器時代の終わりごろ…だいたい 2 万年前から 1 万 5 千年前くらい頃の石器の作り方とその石器に使う石材の研究をしています。例えば、そのころの時代だと北海道がサハリンなどを経由してロシアと陸続きになっていて、そっちの方面からも人類が入ってきているので、そういった大陸から入ってきた石器の作り方とか、あとはそれが北海道を経由して本州まで来ているのですが、それに使われる石材に関しての成分について化学分析をしてその石がどこから来ているのかについてなどを研究しています。

———ありがとうございます。続いて先生のご来歴についてお聞かせください。

高校まで出身地である埼玉県で暮らし、そののち宮城県仙台市の東北大学に進学しました。学部生から大学院の博士課程までおおよそ 10 年間くらい仙台で過ごしまして、ちょうど今年 8 月に新潟大学に着任するまでは東北大学で学生をやっていました。

———では新潟大学で教鞭を取られるのが先生としての初めての教員経験ということになるんですね。

では続きまして、ご担当の授業とその内容についてお聞かせください。

考古学分野の考古学実習を担当しています。考古学実習 A と C が前期に開講されたもので今年度はもう終了しているので、基本的には夏休みから後期にかけて行われる考古学実習B と D を今年度は担当しています。考古学実習 D では発掘調査を長岡市で行う予定で、考古学実習 B では実際に遺跡から出てきた史料について整理作業や図化作業をしたりして、最終的に発掘の報告書を出すというところまでを授業の中で行っていくということになっています。

———なるほど、ありがとうございます。実習では長岡市で発掘を行うとのことでしたが、考古学の観点から、新潟だからこそできることなどはあるのでしょうか?

そうですね、考古学を専門としない方や一般の方からすると、博物館などでさかんにイベントを行っていたり、展示を行っていることもあるように、やはり新潟県は火焔土器など縄文時代の印象が非常に強い気はします。

(▲写真:黒曜石製の石器)

私の研究に絡めて言いますと、先ほどお話しした大陸から北海道を通って入ってきた石器の作り方やその作り方をする集団はどちらかといえば日本海側をつたって本州のほうに入ってきています。そういったなかで、新潟県で出土した黒曜石製の石器の成分を分析しまして、その原産地がどこだったかというと北海道の白滝という地域で産出する石が入ってきていることがわかりました。この白滝で産出する黒曜石は非常に質も良くて大量に産出しているので、ロシアなどにも広がっているのですが、そのような石が出土した国内で最も南に位置する旧石器時代の遺跡が新潟県にあったりします。

———なるほど、そのような歴史があったのですね。それでは、続いて先生の学生時代についてお聞かせください。

卒業論文や修士論文など論文を書いたり読んだりすることも大事なのですが、私は体を動かすことのほうが好きだったので、実際にいろんなところの発掘調査に参加したりとか、先ほどの話にもあった研究の中で石材に関わることもあったので、実際に現地に行って石材の調査をしたりとか、あとは石器を実際に作る製作実験やそれを使う使用実験をよくしていました。

(▲写真:石器の製作実験の様子)

———学生時代はそういった調査に出かけられることが多かったんですね。では考古学専攻の学生としての学生時代、発掘調査をしていて印象に残っている場所や出来事などがあれば教えてください。

(▲写真:発掘調査中の青木先生)

自分の大学で行っている調査に行くのが主ではあったのですが、その他にも他大学が行っている調査に参加することもありました。福島県の郡山女子大学では会津若松市に毎年調査をしていたんですね。そこは同じ土地に旧石器時代、縄文時代、平安時代の 3 つの時期の遺跡があるところで、地面を掘るとまず平安時代の遺構が出てきて、その下を掘ると縄文時代、さらに掘ると旧石器時代というように 3 つの人が住んでいた層があるという遺跡がありました。

そこの調査に学部生の 2 年生のころから博士課程の 1 年生までだいたい 6,7 年参加させていただいて、そのなかで例えば短大生や自分の後輩に教えるという機会が多くありました。また、学年が上がっていくにつれて役割が変わってきて、そこでだんだんと教える立場になったりと、そういった意味でも非常に勉強になった経験でした。

———では先生はどのようなきっかけでこの考古学という分野にご興味を持たれるようになったのでしょうか?

そうですね、もともと歴史には幼いころから興味があったのですが、特に考古学に興味を持った理由というのは、考古学の場合は遺跡から出てきたもの、例えば人が使っていた土器や石器など、そういった使っていたものそのものや、使っていた土地、例えば住居の跡とかから直接当時の人々の生活を探るということが非常に面白いなと思ったからです。それで、高校で志望大学を決める際には考古学の研究職に就きたいなと思い考古学を勉強できるところはどこかというのを探して東北大学に進学したというかたちです。

———ありがとうございます。では最後に、考古学の分野を目指す学生に対してメッセージをお願いします。

考古学の一番の魅力は実際に実物に触れたり、実際に遺跡などに行けることだと思います。私の経験からも言えることなのですが、実際に発掘調査に参加したりとか、土器や石器を作ったり使ったりと、自分の体を通して考えて感じることをするとより分かることが多いのかなと思っていますし、それは考古学の最終目的である当時の人々の生活を明らかにするということにもつながってくると考えています。

まずは発掘調査に行ってみることが大事だと思うので、考古学に興味がある学生は発掘調査に行ってみるといいと思います。ほかにも、博物館に行って実物を見て触るということでも学ぶことも多いですし、理解もしやすいと思います。

———本日はインタビューありがとうございました!

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