「役に立つか立たないかとか深いことを考えずに挑戦してみる」~新美亮輔先生にインタビュー!

西洋言語文化学3年の中村と心理・人間学3年の永滝です。「新任教員インタビュー」として、実験心理学を専門にする新美亮輔先生にお話を伺いました。

新美先生はわかりやすく、気さくに心理学のこと、ご自身の学生生活についてお話しくださいました。学生時代のうちにいろいろな経験をしてほしいという言葉が印象的でした。

  • 日時:2016 年 5 月 17 日(火)
  • 場所:総合教育研究棟F 棟 419
  • インタビュアー:中村(西洋言語文化学 3 年)、永滝(心理・人間学 3 年)
  • インタビュイー:新美亮輔先生(心理・人間学プログラム准教授)

研究内容・講義内容について

学生:本日はよろしくお願いします。では、まず先生の研究内容について教えてください。

先生:はい。専門分野は認知心理学ということになっているのですが、私の場合は、視覚認知と呼ばれている、ものを目で見てどうやって認識するのかというようなところを中心に扱っています。物体認識、情景認知、形状知覚とか、そういうふうに専門用語では言われるのですが。

コンピュータに絵などを出してどう見えたのか、何があると分かったのかなどを被験者に答えてもらうような実験をして、そのデータを分析するというようなことが基本的におこなっていることですね。

学生:そのうえで、どのような講義をされているのですか。

先生:まず、心理学概説という、心理学の色んな範囲を、薄く広く、一通り勉強しようというような授業をしています。私は、心理学の歴史や、感覚と知覚や注意といった分野を担当しています。

あと、心理学の主専攻に進む方が主に対象になりますが、心理学研究法という講義があって、卒論を書く際の実験に必要なノウハウを勉強しましょうというものもあります。

他には、ゼミや、またときどきオムニバスにもでることもあるのですが……。基本的には、認知心理学に限らず、心理学の色々な内容をやっているという感じでしょうか。

学生:お話しを聞いてみて、実際どのように授業されているのか気になったのですが……。ゼミなど心理学では実験のイメージがあって……。

先生:そうですね。実験の練習をするというのは心理学コースでまた別にあって、代表的な実験をやってみようという実習です(心理学の教員が共同で行っている「心理学基礎実験」)。

ゼミ自体では実験はやってないですね。ゼミでは教科書を輪読したり、実験論文を探して、それについて議論したりなどをしているので、ほかの人文の先生のゼミとさほど変わらないと思いますね。

学生:心理学を専攻している友達に錯視の絵を見せてもらったのですが、そういったものも先生の研究されている分野なのですか。

先生:そうですね。錯視の実験もやったことがあります。視覚認知が専門なので、錯覚の中でも錯視が研究対象ですね。

(▲写真:新美先生の授業風景。)

新美先生のご経歴について

学生:それでは次の質問に移りますが、これまでのご経歴を教えていただきたいです。

先生:経歴ですか……。どこから話せばいいのでしょうか(笑)

学生:学生時代にさかのぼっても構いません(笑)

先生:そうですね……。大学に入った時は、特に心理学を勉強したいと思っていたわけではなかったのですが……。今の分野を研究する直接的なきっかけはなかった気がしますね。もちろん、一般教養として心理学の講義をとったりもしたので、そういう意味で受ける講義の一つではありましたね。心理学に進んだのは、正直、成績との兼ね合いもありまして(笑)本当は、社会学や社会心理学にも興味はありました。

大学生 1,2 年生の頃は難しい思想の本などを読んでいたのですが、正直よくわからなかったんですよ。これにはいろいろな原因があるとは思うのですが、例えば、ちゃんとした予備知識を積み重ねていくという読み方をしてないので、理解が追い付かないとか、翻訳なので難しかったりすることがありました。なので、哲学も自分にとっていいのかなと感じたけれども、無理かなとも感じて……。

でも、文系で大学に入ったわけですけど、昔から理系の分野にも興味・関心があって、中学、高校は天文気象部だったり、好きでコンピュータをいじっていたりしていて、文系・理系混ざったところがあったので、実験心理学に惹かれていったのかなと思いますね。

人文学というのは歴史や文学などいろいろな分野が入っていますが、一言で言うと「人間とは何か」という分野だと思いますね。歴史では、人間が何をしてきたかということを勉強しますし、文学では人間はどのようなものを作り出していたかということを勉強します。

私の場合は、「人間とは何か」という問いを考えた時に、何か難しい言葉を積み重ねることだけではなくて、「パキッ」とした証拠が欲しいというか……。データに基づいた実証的なアプローチで人間とは何かという問いを調べるということが個人的には一番バランスがとれているという感覚があります。

もっと厳密にやっていけば、脳の働きだったりとか細胞の生理学的なしくみを調べるという考え方もあるわけですが、でもそのような方法は直接人間を調べる感じがしないというのがあって、やっぱり人間が実際どうふるまうのか直接に調べたいというのがありますね。

自分にとって、人間そのものを直接調べたいという欲求と実証性がほしいというバランスがとれているのが実験心理学かなと思います。

学生:卒業後はどうされたのですか。

先生:大学卒業後は最初の就職氷河期という時期で、そのまま大学院に進んで、修士課程、博士課程までいき、心理学にどっぷりはまっていました(笑)

新美先生の学生時代について

学生:学生時代、先生はどのような学生でしたか。

先生:一言で言えば、胸を張れるような学生時代ではありませんでした。図書館でぼーっとしていたり、映画やアニメをいっぱい見たりしていました(笑)今にして思えばもう少しバイトとか、やったことがないことを色々やっておけばよかったと思っています。

学生:先ほどいろいろ経験しておけばよかったとおっしゃっていましたが、先生はしておけばよかったことなどはありますか。

先生:私が長くやっていたのは塾講師と派遣の家庭教師ぐらいでした。でも同じことばっかりやっていてもつまらないなと思って、ある時、日雇いで単発のバイトを始めて、1年くらいやっていました。毎回毎回違うところに行けて楽しかったです。事務所の引っ越しとか、ゲームショーの設営とか。今となっては海外放浪の1つでもしておけばよかったと思います。結果的には18きっぷで実家の千葉から北海道まで行ったくらいですね。

あと大学の学部生の時、うつうつとしていた時期に、このままじゃいけないと思って何でもいから新しいことを始めてみようと思い立ちました。それで小学生の頃、水泳をやっていたことを思い出しプールに行ってものすごく久しぶりに泳ぎました。久しぶりだから全然うまく泳げなくて、隣の小学生に追い抜かれたりしたんですけど、1、2時間めちゃくちゃに泳いで、すごくすっきりした気分になりました。その時、新しいことを意識してやるということが大切なのだと気づいたんです。

大学院でも忙しくてたまにうつうつとするときがあったので、その際は山に行きました。それも幼い時に親戚に何回か山に連れて行ってもらった経験を思い出して、山登りしてみようと思いました。それもやっぱりすごくすっきりしたんですよね。それ以来時々泳ぎに行くのと山登りするのが趣味になりました。

なんでもいいから、役に立つか立たないかとか深いことを考えずに挑戦してみると意外といいことがあるのではないかと思います。私の場合水泳や山登りは小さいころにやっていましたが、まさか大人になって気分転換になるなんて思ってもいませんでした。

いろいろな経験をしておくと後で何の役に立つのかわからないですよね。どこかで役に立ったりするので、何でもいいので面白そうだなと思ったら、面白そうだと思わなくてもいいかもしれないんですけれども、何かやってみたらいいのではないかということが、私の学生時代の経験から思うことです。皆さんも学生のうちにバイトでもなんでも色んなことに挑戦してみるといいのではないかと思います。

学生:私も最近就職のことなどで悩むことが多いので、なにか新しく始められることを探してみようと思います。

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